研究会レポート番外編・病院見学会
恵寿フィロソフィ"育てる風土"に感銘を受ける
北陸支部では通常の研究会に加え、全国屈指の病院を見学する企画を行っています。その一環として、3月1日から1泊2日の日程で社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院(石川県七尾市)の新病院見学会を開催しました。その様子をリポートします。
午前中のTQM発表大会聴講後、午後は恵寿総合病院の新病院見学会を行いました。エントランスを入ってまず驚かされたのは、入口正面の電光掲示板に「北陸支部御一行様歓迎」の文字が。また、吹き抜けには日本医療経営実践協会のロゴマークのフラッグが飾られており、同院と神野理事長先生の心温まる「お・も・て・な・し」に触れました。
海から7.5mの場所に立地し、病室から七尾湾が一望できる風光明媚な新病院には、数々の新しい"仕掛け"が施されていました。旧病院と本部棟、新病院は2つの道路を隔てて 建っていますが、それらを空中で結ぶ連絡通路がその1つです。
市役所をはじめ、地元消防やトラック協会らと綿密な打ち合わせを経て、3階部分を渡り廊下でつなぎ合わせました。耐震・免震構造を併せ持ち、天井まで広がる大きな窓からは明るい光が差し込む通路は、患者や職員の動線をスムースにするだけではなく、格好のリハビリの場所としても活用されています。連絡通路は2本あり、それぞれに名前が付けられていますが、その命名権を企業から公募し、産業界との連携を密にする工夫があります。
また、エントランスから続く「恵寿シーサイドホール」の壁面には、地元特産の珪藻土を使用した工芸品の組子が埋め込まれています。さらには、安土桃山時代に活躍した地元出身の絵師、長谷川等伯の作品が飾られ、地元に密着した医療機関であることをアピールしています。
屋上にはヘリポートが設置され、奥能登地区をはじめとしたへき地からの救急患者の搬送を受け入れる体制をつくりました。それに呼応し、ER(救急センター)を新設。今年2月に完成したばかりの屋根付き救急車専用入口も見学しました。
そして何よりも一番驚かされたのは、外来にユニバーサル外来を導入していたこと。各診療科が決められたスペースを持つのではなく、各ブースを共有して診療に当たっていたのです。これにより、外来患者の数に合わせ、特定の診療科の窓口を増やすなどの臨機応変な診療体制を組むことが可能となり、待ち時間短縮にも寄与する仕組みを取り入れていました。この体制づくりには、各診療科の医師の理解と協力が不可欠。浅ノ川総合病院管財課の加藤伸一氏は、「どうやって医師の了解を得たのか」と熱心に質問していました。
夜は会場を和倉温泉「のと楽」に移し、神野支部長を囲んで懇親会を行いました。日頃、支部長と膝を突き合わせて話す機会のない参加者たちは、ここぞとばかりに質問を浴びせ、経営談義に花を咲かせていました。その後の別室での二次会では、北陸支部事務局長で浅ノ川総合病院の谷寛憲事務長から、職員の意識を変革させるため、あえて病院機能評価認定を落とし、再受診させたエピソードが披露されるなど、参加者同士の交流は深夜まで続きました。
翌朝の総括の場で、北陸支部理事で白山石川医療企業団の木下悟副企業長から、「トップダウンとボトムアップの両方があって初めて、経営改革が軌道に乗ることを再認識した。経営者の立場からは、もっと"下"からの突き上げに期待したい」との激励があり、2日間にわたる研究会は幕を閉じました。