代表理事 ご挨拶
医療界の現状を見ますと、少子高齢化、人口減少が続き、また働き方改革の進展という背景もあるなか、人材不足が大きな課題になっています。これから将来にわたって国民皆保険体制を堅持し、国民に良質な医療を継続して提供していくためには、マクロとミクロな視点があると思っています。
マクロな視点では、医療保険制度と医療提供体制という大きな2つが車の両輪として確実に機能していくことが重要です。ミクロな視点では、医療サービスの提供主体である医療機関の経営が安定することです。この両方の視点から取り組んでいかなければ国民の皆さまに良質な医療を提供していくことが難しくなると考えています。
ここで大切なのは、制度やシステムをいくら用意しても、それを効果的・効率的に活用できる人材がいなければ意味がないということです。医療経営士という資格は、医療機関の経営の持続可能性を高めるために、経営者・管理者の手足となり、時に頭脳となって、医療経営のスペシャリストとしての立場から経営を補佐する役割だと認識しています。今後、医療経営士のような存在はますます重要になってくるでしょう。
医療機関には国家資格である医師をはじめさまざまな職種の方がいますが、特に現場においてはそういった方々をつなぐリンクワーカーのような存在が欠けているのではないかと実感しています。医療機関においてはそういう人材を育てていくことが不可欠です。医療経営士の方はあまり立場にとらわれず、必要なことを自由にできる立場だと思います。そういう意味で、専門職のリンクワーカー、病院のなかの総合調整役といった役割を担うことも期待したいと考えています。
私の持論にもなりますが、人口減少がこれだけ進む中で、これからの社会保障は「地域づくり」という視点でやらないといけないと思っています。特に過疎地の医療機関は住民にとって地域の財産であり、なくてはならない社会資源です。医療機関もそういう意識を持ちながら、単に医療サービスを提供するだけでなく、地域づくりを進めていく中核のひとつとなることが求められているのではないでしょうか。
直接医療と関係のない分野でも、地域のなかの医療機関の存在という部分を意識して、地域とのつながり、かかわりをつくっていく。そういう役割がこれからは不可欠であると思っていますし、医療経営士の皆さんにはぜひそのような場面で存在感を発揮していただきたいと考えています。
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一般社団法人日本医療経営実践協会 代表理事 原 勝則
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