日本医療経営実践協会 設立趣意書

設立趣意書 (2010年7月1日起草)

21世紀初頭の現在、医療はわが国において極めて重要なテーマとなっている。国家は、国民の生命・財産を保障し、安全で安心できる生活基盤を築く義務がある。その生活基盤の大きな要素に医療の充実が不可欠であることは言うまでもない。

ところが残念なことに、わが国の医療は崩壊の危機に瀕している。その象徴が最近見られる病 院の倒産増加である。国の医療費抑制策のもと、医療システムが揺らぐと同時に、病院の経営基盤は脆くも崩れはじめている。国が政策を転換し、収益基盤を絞 めつけるようになった途端、病院はなすすべもない状況に陥ってしまったのである。

経営の悪化した病院が良質な医療サービスを提供できるはずはない。病院の経営悪化は、国民 が平等に質の高い医療を受けられる権利までをも奪ってしまうことになりかねない。それだけではない。医療崩壊の根底には、いつのまにか医療提供者と患者と の距離があまりに遊離してしまったということがあるのではないか。その結果、患者の医療への信頼も大きく揺らいだのは間違いない。

こうした脆弱な病院の経営基盤の背景には、わが国の医療が過度に行政に頼りきり、自らの基 盤を自らで築いていくという“自立自助の精神”を忘れていることがある。半官半民、護送船団方式で守られてきた世界がわが国の医療の姿なのである。それが ために医療の土壌は非常に脆くなり、時代の激変のなかで沈没してしまったのだ。

したがって、これら諸問題に対処するには、受身型ではなく、自立した現場感覚を持つことが重要であり、そのなかで実践的に政策を考えていくべきである。本来、政策とは現場から生まれてくるものである。基盤は自らで築き、足らないところを官で補完すべきなのである。

本会は、国民に対して安全・安心な医療を提供できる基盤を築くために、医療と経営の本質を学び実践する、現場感覚を備えた人材の育成、「民」主役の医療の確立を目指す――等を急務として取り組むべきと考える。そしてこれらの実現こそが、わが国の輝かしい医療を創造することを信じて疑わない。

 

日本医療経営実践協会 発起人一同

▲ ページTOPへ